やあ、俺だ。
今日の帰りに、川崎で京浜東北線に乗った時の事だ。俺の向かいに、表紙に"DVD AUDIO~"と書かれた小冊子を熱心に読んでいるセニョールがいたんだよ。あ、ちなみにDVD AUDIOってのはだな、動画に興味が無い一次元萌えな人たちの好きな円盤の事さ。
そんなマニアックな冊子を、目を皿の様にして見入っていたセニョールだが、蒲田に付く頃にゃあぐっすり眠っちまっていてね。ああ、あれだけ気合が入っていても眠っちまうんだ、そりゃあさぞ疲れていたんだろうと思ったもんさ。
だがどんなに眠っても、その冊子だけはしっかと持っているんだよこれが。どんなに電車が揺れようと、うっかり左手が離れちまっても、右手に握られたあの冊子。余程大事な物に違いないぜ。
なのに電車が田町に着いた時、悲劇が起こった。
電車ががくんと揺れた一瞬、あんな大事に握られていた小冊子が、セニョールの右手からするりと落ちた。その冊子が落ちる様は、俺にはスローモーションに見えたね。
ああっ、やっぱりか!もうダメなのかっ!!
落胆する俺に追い討ちを掛ける様に、夢現のセニョールの足が、今落ちた
小冊子の上にっ!なんて神は残酷なんだ。見ちゃあいられないぜ!!
その後は酷いもんさ。あれ程冊子を大事にしていたセニョールが、まるで人が変わったかの様に踏みつけている。お陰で冊子は見る影もなくっしゃくしゃさ。俺はもう、人を信じられなくなっちまいそうだよ。
それから暫くして東京に着いた頃、突如セニョールは飛び起きた。そして撥ねる様に立ち上がるとその足元には、変わり果てたあの小冊子。セニョールはそいつを拾い上げ、駅の人込みに消えて行った。表情から察するに、自体を飲み込めちゃいない様だ。
セニョール、あんたの大事にしていた冊子は、汚されちまったんだよ。
あんた自身の足でな!!
…てな具合に、目の前に起こっている何でもない出来事を悲劇として眺めていると、俺のラテンの血が騒ぐぜ。
posted by mexican at 00:21|
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Train of Tought
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